menamomi.net   シャクヤク

シャクヤク 画像

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シャクヤク

 和名(わめい)として今日(こんにち)わが邦(くに)では、芍薬をシャクヤクと字音(じおん)で呼んでいることは、だれもが知っているとおりであるが、しかし昔はこれをエビスグサ、あるいはエビスグスリと称(とな)え、古歌(こか)ではカオヨグサといった。

 エビスグサは夷草(えびすぐさ)、エビスグスリは夷薬(えびすぐすり)、ともに外国から来たことを示している。カオヨグサは顔美草(かおよぐさ)で、花が美麗(びれい)だから、そういったものであろう。

 元来(がんらい)、芍薬(しゃくやく)の原産地は、シベリアから北満州〔中国の東北地方の北部〕の原野である。はじめシベリアで採(と)った白花品(はっかひん)へ、ロシアの学者のパラスが、Paeonia albiflora Pallas の学名をつけてその図説を発表したが、満州〔中国の東北地方一帯〕に産するものには、淡紅花(たんこうか)のものが多い。しかしそれは、もとより同種である。種名の albiflora は、白花の意である。

 日本に作っている芍薬(しゃくやく)は、中国から伝わったものであろう。今は広く国内に培養(ばいよう)せられ、その花が美麗(びれい)だから衆人(しゅうじん)に愛せられる。中国では人に別れる時、この花を贈る習慣がある。つまり離別(りべつ)を惜(お)しむ記念にするのであろう。

 芍薬は宿根性(しゅっこんせい)[#ルビの「しゅっこんせい」は底本では「しゅっこんそう」]の草本(そうほん)で、その根を薬用に供(きょう)する。春に根頭(こんとう)から勢(いきお)いのよい赤い芽を出し、見てまことに気持がよい。充分(じゅうぶん)成長すると、高さはおよそ九〇センチメートル内外に達し、その直立せる茎(くき)は通常まばらに分枝(ぶんし)する。葉は茎(くき)に互生(ごせい)し、再三出式に分裂している。各枝端(したん)に一花ずつ開き、直径はおよそ一二センチメートル内外もあろう。花下(かか)に五片(へん)の緑萼(りょくがく)があるが、蕾(つぼみ)の時には円(まる)く閉じている。花弁(かべん)は平開し、およそ十片(ぺん)内外もあるが、しかし花容(かよう)、花色種々多様(しゅじゅたよう)で、何十種もの園芸的変わり品がある。花心(かしん)に黄色の多雄蕊(たゆうずい)と、三ないし五の子房(しぼう)がある。

 芍薬(しゃくやく)の姉妹品(しまいひん)で、わが邦(くに)の山地に見る白花品(はっかひん)は、ヤマシャクヤクで、その淡紅花品(たんこうかひん)はベニバナヤマシャクヤクである。花は芍薬に比べるとすこぶる貧弱だが、その果実はみごとなもので、熟(じゅく)して裂(さ)けると、その内面が真赤色(しんせきしょく)を呈(てい)しており、きわめて美しい特徴(とくちょう)を現(あらわ)している。

出典 植物知識 牧野富太郎

出典 植物知識 牧野富太郎

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